「補聴器を使ってみたけれども、効果を感じなかったのでやめてしまった」という方もいらっしゃいます。本当に補聴器は効果がないのでしょうか?せっかく購入した補聴器なので、使いこなせるようにするにはどうしたらいいのでしょうか。ここではこれらの疑問についてお答えします。一言でいうと、「自分の耳と脳をトレーニングすること」と、「調整を繰り返し行うこと」が補聴器を使いこなす上で重要なポイントです。
皆様は、補聴器をつけてもすぐ快適に聞こえるようにはならないことを、ご存知ですか?とても重要な事なのですが、実はあまり知られていません。メガネはかけたらすぐに見えるようになりますが、補聴器はある程度の期間のトレーニングが必要になります。
一体なぜでしょうか?実は「脳」が大きく関わってきます。耳が聞いた音は、耳の中で電気信号に変換されて脳に伝わり、脳で「音」を情報として処理されます。音を分析し、その音が持つ意味を理解するのは「脳」なのです。
難聴の方の脳は、あまり音を処理していないため、音が入ってこない静かな環境に慣れてしまっています。補聴器をつけて再び音が聞こえてくると、たとえそれが本来必要な音の刺激であったとしても、その刺激に脳がすぐには慣れないことがほとんどです。そのため、難聴の方が補聴器を最初につけた時は、「騒がしい」と感じてしまうのです。
ここで「自分には合わないから使えない」とあきらめるのはもったいないことです。脳には、自分にとって必要な音と不必要な音を無意識に識別して、必要な音だけを聞き取る優れた機能があります。聞こえの環境が大きく変わると、この機能はすぐには順応できないのですが、一定期間連続して脳に刺激を与えると、だんだん改善していきます。うるさいと感じても補聴器をつけて脳をトレーニングすると、脳が再び音に慣れて、周囲の音から必要な音を聞き分ける力もついてきます。
初めて補聴器を使用する場合には、慣れるのに目安として3ヶ月程度のトレーニング期間が必要だと言われています。この間は、補聴器の専門スタッフによるフォローアップや適切な調整、そしてご家族のサポートが不可欠です。